なぜ、刑事ドラマはおもしろいのか。

NAZEDEKA。刑事ドラマを専門に「映画・テレビドラマ」の研究をしています。

クライムハンター 怒りの銃弾

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基本データ

タイトル:クライムハンター 怒りの銃弾
公開日:1989年3月10日(金)
上映時間:59分
監督:大川俊道(初)
脚本:大川俊道(初)
出演者:世良公則、田中美奈子、又野誠治、ハント敬士、竹内力原田芳雄片桐竜次
銃撃戦:A
爆破:B
格闘:-
カーアクション:C

概要

Vシネマ作品。

相棒を失ったジョーカーが刑事の肩書きを捨て犯人を追う物語です。仇討ちを凄まじい銃撃戦で仇撃ちとして描く作品となっています。また、ブルース殉職(?)にも注目です。

解説

・アクション

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本作のアクションは「銃撃戦」がメインです。
ジョウ(拳銃、マシンガン)・ブルース(拳銃、グレネードランチャー)・リリー(ショットガン)と西部會(拳銃、サブマシンガンアサルトライフル)の銃撃戦、ジョウ(拳銃、ショットガン)・リリー(拳銃、ショットガン)と西部會(拳銃、ショットガン、サブマシンガン)の銃撃戦、ジョウ(拳銃)・アヒル(拳銃)と犯人(拳銃・ショットガン・サブマシンガン)の銃撃戦、ジョウ(拳銃)と銃の売人(拳銃、ショットガン)の銃撃戦、ジョウ(拳銃)・リリー(ショットガン)とブルース(拳銃)の銃撃戦、ブルース(ショットガン)・ドク(拳銃)の銃撃があります。その他は、ジョウの車の爆破、車のアクション等があります。

・ヒューマン

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本作のヒューマンは「相棒」がメインです。
相棒アヒルを殺されたジョウ。新たな相棒リリーとともに、アヒルの仇を追うジョウの姿が描写されています。

豆知識(ネタバレ注意)

・「東映Vシネマ」第一弾!

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本作は東映Vシネマ第一作目です。また、大川俊道さんの初監督作品でもあります。なお、テレビ放送もされましたが、視聴率は15.7%でした。

・ジョーカーはアイディアマン!?

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劇中の、ネズミでリリーを驚かす・ジョウのショットガン殺陣・鎮痛剤の副作用・リリーの銃でハントを撃つは、世良公則さんのアイディアです。また、多くのセリフも世良さんが作っています。一例として、支那虎から脱出したジョウとリリーの会話シーンは、少ないリリーのセリフを増やすため、大川監督が背景のレストランで世良さんと食事中にセリフを考えてほしいと頼んだそうです。なお、このシーンは沖縄ロケ最後の撮影です。

・ブルース殉職!?&車も殉職!?

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又野誠治さんが演じる役の名前は「ブルース澤村」です。この役名は、「太陽にほえろ!」(1972年~1987年放送)で又野さんが演じた刑事のニックネーム「ブルース」と役名の「澤村」が由来です。「太陽にほえろ!」のブルースは殉職していませんが、本作のブルースは殉職(?)します。これは、大川監督が「太陽にほえろ!」のブルース主役話のメインライターをしており、殉職話を描く前に番組が終了し、殉職シーンが描けなかったため本作で実現させました。また、世良公則さんも「太陽にほえろ!」にボギー刑事としてブルース刑事と同時期に出演しています。なお、劇中、ブルースが乗るアメ車はボロボロで、撮影していないときもエンスト防止のためエンジンをかけっぱなしにしていたら、芝生に引火し燃えてしまったそうです。

・リリーのダンス&リリーはユリ!?

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劇中、支那虎でリリーがダンスをします。このダンスは、田中美奈子さんが事前練習していたものではなく当日変更になりました。これは、練習していたダンスが衣装のハイヒールを履いてはできないことがわかったためです。そのため、曲も変わり、当山ひとみさんの楽曲「WATCH OUT (FOR THE LADY)」(1988年12月1日リリース)が使用されました。また、本作の音楽制作である兼松光さんは当山さんのプロデューサーです。なお、リリーの使用拳銃のグリップにユリがあしらわれているのは、リリー(ユリ)であるためです。

・オートマグはジャムりやすい!?

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劇中、ハントの使用拳銃であるオートマグがジャム(作動不良)をおこしてしまいます。このジャムしやすいというのは、実際のオートマグの特徴です。なお、排莢がうまくいかないという演出は、本作以前の排莢しない電気着火式のプロップガンを使用した作品では不可能であり、本作の特色といえます。

・アヒルではなくネコを測った!?

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劇中、アヒルがブルースの部屋の前でネコと対面します。このシーンの撮影時、竹内力さんの身長を測るよう指示されたスタッフが、間違えてネコの身長を測ってしまったそうです。

・衣装は自前!?

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ドクの衣装は原田芳雄さんの自前です。また、タバコのモアも原田さんの私物です。

・山猫のセリフがない!?

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劇中、支那虎でジョウが山猫と対面します。このシーンはBGMのみで音声がありません。撮影では山猫のセリフはありましたが、演出の都合上カットされました。結果、山猫は劇中セリフがありません。

・映写マンはスタッフ!?

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映写マン役の松山鷹志さんは、大川監督と同じ大学(明治大学の後輩)であり、撮影期間中、大川監督の運転手をしていました。そのため事実上は俳優というよりスタッフでした。また、松山さんは本作の打ち上げ翌日に結婚式をあげていますが、式場も大川監督と同じです。なお、映写マン登場シーンの撮影場所は、東映撮影所の実際の映写室です。

・ハッピーバースデー!?

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劇中、速水舞さん演じる東洋女がハッピーバースデーの歌をうたいます。しかし、「ハッピーバースデートゥーユー」とは異なっています。これは、「ハッピーバースデートゥーユー」を歌うとJASRACに抵触するため、わざと違う歌にしています。なお、大川監督と映写マン役の松山鷹志さんは同じ誕生日(4月2日)です。

・ジョーカーじゃない!?

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劇中、ジョウが西部會の施設に踏み込みます。このジョウを演じているのは世良公則さんではなく企画助手の石井和彦さんです。石井さんは又野誠治さんのマネージャーです。

・血に染まる銃撃戦!

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劇中、支那虎での銃撃戦があります。この銃撃戦の撮影後、衣装スタッフが血のりの付いた衣装をみて気分が悪くなり吐いてしまったそうです。

・ハントは怪人!?

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劇中、ハントが手榴弾で爆死します。このシーンの爆破カットは「仮面ライダーBLACK」(1987年~1988年放送)のカットを使用しています。

・オマージュ!

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劇中の、ハント・赤鼻・青鼻の衣装はアメリカ映画「現金に体を張れ」(1956年6月6日公開)、獅子舞の口から二丁拳銃はテレビドラマ「矢車剣之助」(1959年~1961年放送)、ドクのセリフ「ジョーカー死ぬなよ」は「やさぐれ刑事」(1976年4月3日公開)のオマージュです。

・沖縄ロケ!

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劇中の、リトルトーキョーは「沖縄県国頭郡金武町」、ブルースの隠れ家周辺は「沖縄県名護市辺野古」がロケ地です。また、金武町は「南へ走れ、海の道を!」(1986年8月30日公開)、辺野古は「友よ、静かに瞑れ」(1985年6月15日公開)を大川監督が観てロケ地にしたそうです。なお、劇中の辺野古無人ですが、撮影の際、人よけしたわけではなく実際に無人だったとのことです。

収録ソフト

・単品

・BOX

 

絶対考察(ネタバレ注意)

 クライムハンター、犯罪狩り。刑事はまさしくクライムハンターである。だが、ジョウはバッチをすてた。相棒の仇を撃つべく、怒りの銃弾を愛銃に込めて。
 ジョウとアヒルはブルースの逮捕にむかった。フロントマンはボトルシップをながめている。ボトルシップとは対照的に荒々しくブルースを逮捕する二人。護送中、謎の三人組に襲撃される。ブルースを逮捕し晴れやかだった二人に雨のような銃弾がふりそそぐ。ジョウの背中がポップコーンのように弾ける。リーダー格の銃口がアヒルにむけられる。マガジンに手が届かないジョウ。アヒルの死。必ず頭を撃ちぬくようにと無線はつげていたが、皮肉にも頭を撃ちぬかれて死んだ。おふくろからもらったシャツを自らの血でよごしてしまう。
 よごれのない純白の病室で目覚めたジョウ。アヒルは手の届かないところにいってしまった。銃を取りだしバッチは残す。刑事をすて純粋なハンターとなる。ぼろぼろの雑巾のような身体で街へでる。雑巾は掃除につかうものだ。
 西部會を追う中、シスターと出会う。ハンマーの倒れた銃をジョウにむける。直後、ハンマーの起きた銃をたずさえた四人組が現れる。四人組を倒しマシンガンを鹵獲するが、シスターは置いていってしまう。
 フィルムのようにまわる回転式拳銃を取りだしたのはブルースである。ブルースは今日が誕生日。プレゼントを受けとる。渡した二人は今日が命日になるところであった。
 支那虎にむかうも囚われたジョウ。再び現れたのはシスターである。ネズミのように潜入していたがネズミは嫌いらしい。ネズミよろしく脱出したいが酒場を通らなくてはいけない。獅子舞に化けたジョウ。警報が鳴り響く。眠れる獅子が目覚める。獅子が火をふく。オウム返しに見舞われる。弾ける酒ビン、ポップコーン。酔いの覚める銃撃戦の末、脱出に成功する。
 再びシスターを置いていこうとするジョウ。助手席に乗る相棒は決まっている。手に入れたのはキーだけじゃないとシスター。助手席をうながす。シスターを相棒と認める。リリーはジョウの心の扉を開くこともできたようだ。
 ブルースは隠れ家で電話をする。光がさしこむが、500万ドルは光の届かないところにあるらしい。プレゼントをもっていくと電話をきる。ジョウはいけどりを狙うが、突如目がくらむ。ブルースを追う二人にプレゼントがたちはだかる。回転式グレネードランチャー。炎上する車。
 車は炎につつまれたが、リリーはシャワーにつつまれる。ブルースに詳しいリリー。500万ドルのありかを教えたのはシャンペンのせいだと。酒場を通りぬけても酔いはぬけなかったようだ。男なら鼻をつぶしてるとジョウ。
 アヒルの死んだ現場におもむく。ポップコーンのふくろをひろう。アヒルはおふくろさんにつつまれているだろう。
 リリーがブルースにつれだされ、ジョウに電話が入る。きしむ音がせまる。部屋に入ってきたのはドクだ。鎮痛剤は劇薬だった。マシンガンをたずさえ、自らが劇薬となり治療にむかう。
 ブルースは赤鼻と青鼻をつぶす。プレゼントは命日だ。謎の三人組は警察だった。ジョウ、リリー、ブルースの三人がそろう。
 最後の銃撃戦。三人と西部會の銃弾がいりみだれる。排莢音がこだまする。500万ドルを返すブルース。直後、胸が弾ける。発砲音がこだまする。ブルース自身の歯車はもう回転しない。無口な山猫に銃口でこたえるジョウ。ブルースにいのるリリー。500万ドルは返ってもいのちは返らない。
 500万ドルを引きずるリリー。重さが身につまる。ジョウを目にし駆けよる。直後、腹が弾ける。血とともに泡がふきでる。これからの腹を割って話せる日々が泡と消えた。皮肉にも愛銃はホールドオープンする。最後に現れたのはハントだった。鎮痛剤をのまなくても金に目がくらんでいたようだ。ハントは眼鏡をはずす。色眼鏡でハントを見ていたのはジョウだった。バッチに隠れた人殺しとバッチを捨てた人殺し。おたがい掃除屋を気取っていたが、掃除屋がいなくなることが街をきれいにすることをジョウは悟る。最後の怒りの銃弾はリリーの弾だ。ハントの銃がジャムる。ポップコーン袋から特大のポップコーンがころげでた。弾けるハント。同時に500万ドルのジャムのような甘い日々も弾けた。
 クライムハントは終わった。クライムハンター・ジョーカー。リリーを抱きかかえ、いずこへむかうのか。人との縁はきれても、銃との縁はきれない。銃口のむかうさき、それがジョーカーの進む道なのだ。