なぜ、刑事ドラマはおもしろいのか。

NAZEDEKA。刑事ドラマを専門に「映画・テレビドラマ」の研究をしています。

クライムハンター2 裏切りの銃弾

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基本データ

タイトル:クライムハンター2 裏切りの銃弾
公開日:1989年11月10日(金)
上映時間:69分
監督:大川俊道(2)
脚本:大川俊道(2)、柏原寛司(初)
出演者:世良公則葉山レイコ、エリック・ダグラス、又野誠治、堀勉、金子研三、山田辰夫、ハント敬士
銃撃戦:A
爆破:A
格闘:B
カーアクション:B

概要

Vシネマ作品。

新たなコンビを組んだジョーカーが潜入捜査をしている同僚を追う物語です。ときに追うもの、ときに追われるものとなる刑事たちを描く作品となっています。また、ゲストスターであるエリック・ダグラスさんにも注目です。

解説

・アクション

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本作のアクションは「銃撃戦」と「爆破」がメインです。
「銃撃戦」は、ジョウ(拳銃、サブマシンガン)とスネイク(拳銃、ショットガン)の銃撃戦、スネイク(ショットガン、ロケットランチャー)・組織(拳銃)と警官隊(拳銃、ライフル)の銃撃戦、ジョウ(拳銃)とスネイク(拳銃)・組織(拳銃)の銃撃戦、ラッツ(拳銃)・麗子(拳銃、ロケットランチャー)・キャッシュ(拳銃)・サル(サブマシンガン)・組織(サブマシンガン)・強盗(ショットガン)の銃撃があります。「爆破」は、スネイク・パトカーの爆破があります。その他は、ジョウの格闘、車のアクション等があります。

・ヒューマン

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本作のヒューマンは「刑事と仮面」がメインです。
仮面をつけた男の気持ちがわかるジョウ。刑事の仮面か犯罪者の仮面か、わからないキャッシュ。ゆれうごく男たちが描写されています。

豆知識(ネタバレ注意)

・ラッツはスタン!?

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ラッツ役の堀勉さんは、アメリカドラマ「マイアミ・バイス」(1984年~1989年放送)のスタン刑事をイメージしてキャスティングされました。

・二十歳の誕生日にカーアクション!?

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劇中、麗子がスネイクから車で逃げます。このシーンの撮影日は、葉山レイコさんの二十歳の誕生日(1989年7月13日)です。撮影の際、葉山さんはガラスが散るからと頭にゴミ袋をかぶったそうです。また、免許はもっていないため、高橋レーシングの高橋政生社長が手足でアクセルとブレーキを操作しています。なお、誕生日ケーキが用意されておらず、急遽ケーキを作ったそうです。

・スエードジャケット&ドレッドヘア

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劇中、ジョウとスネイクの格闘があります。この際、スネイクの衣装のスエードジャケットが高価であり、暴れると買取になってしまうため、大川監督は早く脱がせたかったそうです。なお、スネイクのドレッドヘアは又野誠治さんのアイディアです。

・首が飛んだ!?

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劇中、スネイクがロケットランチャーで撃たれ首がふきとびます。この撮影で使用されたダミーの首は、撮影後、又野誠治さんの自宅に飾られたそうです。また、又野さんが経営していた飲食店「Aサイン」にも置かれていたとのことです。

・ゲストスター!

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本作のゲストスターはエリック・ダグラスさんです。エリックさんはカーク・ダグラスさんの息子であり、マイケル・ダグラスさんの弟(異母弟)です。本作の出演により、アメリカから取材が来たそうです。また、本作同年公開のアメリカ映画「ブラック・レイン」(1989年9月22日公開)は、マイケル・ダグラスさん主演であり、ロサンゼルスで日本の街を再現しましたが、本作は日本でロサンゼルスの街を再現しているため、逆ブラック・レインと言われました。なお、エリックさんの通訳をしたマイケルさんは、ジョー山中さんの弟です。

・「ハッピーエンドに乾杯」

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劇中、「DRINK TO A HAPPY ENDING(ハッピーエンドに乾杯)」と、書かれた看板が登場します。これは、アメリカ映画「スカーフェイス」(1983年12月9日公開)に登場する「THE WORLD IS YOURS(世界はあなたのもの)」と、書かれた飛行船のオマージュです。

・ワイヤーアクション!

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劇中の、スネイクに撃たれ倒れるサル・ジョウに撃たれ倒れる組織員・車の屋根にしがみつくスネイクは、ワイヤーアクションです。なお、ジョウに撃たれ倒れる組織員は、スケートボードの上に乗り、ボードをワイヤーで引いています。

・消防車が来た!?

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劇中、スネイク死亡後、赤いスモークがたちこめます。このスモークは照明で赤くしていますが、火事と間違われ消防車が三台来たそうです。そのため、照明を緑に変更したとのことです。

・監督がリロード!?

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劇中、ジョウが、スネイク・組織との銃撃戦でリロードをします。このリロードカットは大川監督が演じています。なお、NGを10回してしまったそうです。

・「CRAZY AND CRAZY」

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劇中、ジョウと撃ちあうスネイクの背後に看板があります。この看板は、予算が足りなくなったため、スポンサー(Mr.CRAZY)を探し作ったそうです。

・ディスコは日比谷と三軒茶屋!?

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劇中、ディスコが登場します。このディスコは、ホールは日比谷のラジオシティ、バックステージは三軒茶屋のGIGがロケ地です。ラジオシティは、本作同様の大川監督と柏原寛司さん共同脚本作「またまたあぶない刑事」(1988年7月2日公開)にも登場します。また、GIGは大川監督がウッチャンナンチャンの番組を観て知り、番組に出演していた田中美奈子さん(「クライムハンター 怒りの銃弾」に出演)に場所を教えてもらったそうです。

リトルトーキョーロケ地!

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劇中の、警察署外観・ストリップバー外観・病院内は、日本大学芸術学部の江古田キャンパスがロケ地です。これは、助監督の小林要さんが日大のOBであるため使用されました。また、サルを尾行する走行シーンは、新宿の京王プラザホテル前を道路封鎖し、右側通行にして撮影されました。

・共同脚本!

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本作はクライムハンターシリーズにおける唯一の共同脚本作品です。共同執筆として、柏原寛司さんが参加していますが、セリフのみ使用されました。なお、エリック・ダグラスさんがいいセリフだと褒めたのは、柏原さんのセリフばかりだったそうです。

・夫婦&兄妹!

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エンドロールに「撮影協力」でクレジットされている「加藤志保子」は、プロデューサーの加藤和夫さんの夫人です。また、「進行」でクレジットされている「石井淳子」は、プロデューサー補の石井和彦さんの妹です。

・リリーとドックが見学!?

本作の撮影中、「クライムハンター 怒りの銃弾」に出演した田中美奈子さんと、「太陽にほえろ!」(1972年~1987年放送)で、世良公則さん、又野誠治さんと共演した神田正輝さんが見学に訪れたそうです。

収録ソフト

・単品

・BOX

 

絶対考察(ネタバレ注意)

 クライムハンター、犯罪狩り。刑事はまさしくクライムハンターである。危険な狩りには潜入が必要なこともある。また、同僚の存在も必要不可欠である。だが、その同僚からジョウに裏切りの銃弾がふりかかる。
 裏切りは日常茶飯事の街、リトルトーキョー。ジョウがむかったのはポルノショップ。顔色一つ変えず銃弾をそそぎこむ。サルにとり、ポルノより扇情的な刺激である。
 相棒ラッツとサルを尾行する。サルの電話と同じくラッツのジョークも通じない。ストリップより刺激的なメインイベントがショットガンの号令ではじまる。逃げたサルはスネイクに殺される。尻尾は目撃者のネコしかつかめなかった。
 いきづまった捜査をつなぎとめたのはブレスレット。腕輪がみちびいたのは麗子。いきついたのは立ち入り禁止。腕に覚えがあるも、麗子のように化粧をほどこされるジョウ。ゴミのようではなく、ゴミとして捨てられる。50ドルのほどこしつきで。いきつく暇もなくアンナの部屋へむかう。ジョウの電話も通じない。
 愛銃を奪われリボルバーをもつジョウ。ジョウの体と心はリボルバーのように無骨となった。麗子はコールガール。狙われる麗子。麗子の電話も通じない。
 雨の中、キャッシュの監禁場所へむかう。アンナの死が麗子のタバコをふるわせる。ふるえているのはタバコだけではないようだ。キャッシュを助けだしたジョウに雨のような銃弾がふりそそぐ。ラッツの死。キャッシュがジョウを化粧する。
 キャッシュがつけていた仮面は犯罪者ではなく刑事の仮面だったのか。仮面をつけていたのは主任も同じだ。この街がデスクの窓から眺めるほど甘くないことを、窓を突き破って水に飛び込んだジョウは身に沁みて知っている。
 愛銃は戻ってもラッツは戻らない。ピンボールのようにラッツはフリーズできない。ホットドッグスペシャルの味はアイスクリームのように冷たい。金メッキだと思っていた黄金コンビは純金だった。メッキがはがれたのはキャッシュの方だった。帽子の言葉を胸にきざむ。
 ラッツが言えなくなったジョークをキャッシュは言う。裸で稼ぐ麗子の眼がキャッシュを裸にする。自分はボスなのか刑事なのか。麗子はキャッシュと応え続ける。キャッシュにはジョークに聞こえない。
 取引に現れるスネイク退治のため、ジョウも取引しサブマシンガンを手にいれる。直後、警官隊に囲まれるも掃射し振りきる。裏切りの銃弾はお互い様だ。お互い様でスネイクも警官隊に囲まれる。神様を裏切らないとCWは言ったが、スネイクは神をもおそれぬ猛撃をする。
 麗子は裏切った。猛追するスネイク。片腕に裏切りの銃弾をはなつ。それは、キャッシュの片腕に撃ったのと同じことである。
 ジョウとスネイクの決戦がはじまる。溜めこんだ鬱憤を銃弾とともにはきだすジョウ。レーザーのにぶい音が蒸し暑さを増長する。赤い点がスネイクを化粧する。対峙する二人。お互い血を化粧しあう。厚化粧となったスネイクが倒れる。50ドルをほどこしてやる。直後、立ち上がるスネイク。ロケットランチャーが火をふく。マネキンのように首がおち粉々になる。もはや罰金も必要ないだろう。
 麗子を盾にするキャッシュ。もはや後ろ盾はない。撃ったジョウ。薬莢とともに命がおちる。手のうちにバッチがあった。キャッシュは潜入捜査から解放された。死体になるのに二時間かからないこの街で、三年間おびえていたのは間違いではなかった。スネイクのような殺人マシーンになりきれず、ボスか刑事か、わからなかった。「ハッピーエンドに乾杯」。毎晩見上げたそれは刑事を忘れさせなかった。キャッシュを夜明けにみちびいたのはサンセット号ではなくジョウである。バッチを握らせるんだ。刑事として死ねたキャッシュ。だが、ハッピーエンドであろうか。レーザーサイトのように最後までぶれなかったジョウの心がふるえる。
 同僚を殺され同僚を殺した。キャッシュに撃った弾は裏切りの銃弾だったのか。最後のタバコを吸うジョウ。タバコの味はカクテルのように甘くなく苦かったであろう。