なぜ、刑事ドラマはおもしろいのか。

NAZEDEKA。刑事ドラマを専門に「映画・テレビドラマ」の研究をしています。

クライムハンター3 皆殺しの銃弾

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基本データ

タイトル:クライムハンター3 皆殺しの銃弾
公開日:1990年10月12日(金)
上映時間:77分
監督:大川俊道(3)
脚本:大川俊道(3)
出演者:世良公則竹内力、吉田美江、辻沢杏子清水健太郎、ハント敬士、片桐竜次、又野誠治、堀勉
銃撃戦:A
爆破:A
格闘:B
カーアクション:B

概要

Vシネマ作品。

かつて思いをよせた女性のため、ジョーカーが仲間と宿命の闘いに挑む物語です。五人の男女の交錯する思惑を描く作品となっています。また、ジョーカー最期の銃撃戦にも注目です。

解説

・アクション

             

             

本作のアクションは「銃撃戦」がメインです。
ジョウ(拳銃、ガトリングガン)・リキ(拳銃、ショットガン)・サニー(ショットガン)と組織(拳銃)の銃撃戦、ジョウ(拳銃、ショットガン)・リキ(ショットガン)と組織(拳銃、アサルトライフル)の銃撃戦、ジョウ(拳銃)とニコル(拳銃)の銃撃戦、ジョウ(拳銃)・サニー(ショットガン)とリキ(拳銃)・ジャンキー(拳銃)の銃撃戦、ジョウ(拳銃)と組織(拳銃)の銃撃戦、サニー(拳銃)と組織(拳銃)の銃撃戦、組織(ガトリングガン)・支那虎(拳銃)の銃撃があります。その他は、車・ドラム缶の爆破、ジョウの格闘、車のアクション等があります。

・ヒューマン

             

             

本作のヒューマンは「思い出」がメインです。
思い出の女性・芹香。芹香の思い出がジョウの愛銃に重くのしかかる。男と女たちの思いの闘いが描写されています。

豆知識(ネタバレ注意)

・リキはトム!?

             

竹内力さん演じるリキは、アメリカ映画「ストリート・オブ・ファイヤー」(1984年6月1日公開)のトム・コーディをイメージしています。

・サニーは芹香だった!?

             

吉田美江さんは、当初芹香役でオファーされていましたが、サニーをやりたいと申し出て、サニー役となりました。また、銃撃を背中にうけた際の弾着でむちうちになってしまったそうです。なお、「サニー」の名は、アメリカ人歌手ボビー・ヘブの楽曲「Sunny」(1966年6月リリース)の引用です。

・BJはカメオ出演!?

             

又野誠治さんはワンシーンのみ出演しています。これは、Vシネマ「兇悪の紋章」(1990年6月8日公開)主演のため、スケジュールが組めなかったからです。また、「兇悪の紋章」は世良公則さんも出演しています。なお、BJ最期のセリフ「すまん!」は又野さんのアドリブです。

・主任はキャステロ!?

             

片桐竜次さん演じる主任は、アメリカドラマ「マイアミ・バイス」(1984年~1989年放送)のキャステロ主任をイメージしています。

・弁慶医師はベン・ケーシー!?

             

堀勉さん演じる医師の役名は弁慶です。この「弁慶医師」は、アメリカドラマ「ベン・ケーシー」(1961年~1966年放送)のパロディです。

松山鷹志は出ていない!?

               

松山鷹志さんは、ワンシーンのみエキストラとして出演し、エンドロールにクレジットされていますが、画面には映らなかったそうです。また、シナリオハンティングに同行し、大川監督の運転手もしたため、事実上はスタッフでした。

・取引場所にコーディネーター!?

             

劇中、支那虎が銃の取引場所に向かう途中、白人男性とすれ違います。この男性は、グアムロケのコーディネーターをしたビル・ピアソンさんです。

・脚本が変わった!?

             

劇中、ジョウがジュラルミンケースを撃ちます。これは、当初、芹香のハイヒールのかかとを撃つ予定でしたが、絵面が地味であるとして変更されました。また、劇中、芹香が電話で「ありがとう」とジョウに言います。このセリフは、当初「さよなら」でしたが、辻沢杏子さんが「ありがとう」に変えたいと申し出て変更されました。

・スタントマンは助監督!?

             

劇中、ジョウの運転する車がクラッシュします。この撮影時、助監督がスタントマンを呼び忘れたため、助監督自らがスタントをしています。

・壁がゆれてる!?

               

劇中、シャワールームの壁がゆれています。これは、ベニヤ板で無理やり作ったからだそうです。

・リキとサニーがNG!?

             

劇中、ジョウとリキが鉄パイプで格闘します。この撮影時、竹内力さんが世良公則さんの頭に鉄パイプを二回当ててしまったそうです。また、劇中、サニーの運転する車が廃車置き場を走ります。この際、吉田美江さんはカメラを通りすぎた後、勢いあまって車をぶつけてしまいました。

・「安田マミ」

               

エンドロールに「英語指導」でクレジットされている「安田マミ」は、安田成美さんの妹です。

・タバコはジタン!?

               

劇中、ニコルはジタンを吸っています。これは、大川監督が庄野真代さんの楽曲「飛んでイスタンブール」が好きで、歌詞に出てくるジタンを引用したそうです。なお、庄野真代さんは「飛んでイスタンブール」で第29回NHK紅白歌合戦に出場していますが、対戦相手は世良公則&ツイストです。

・オマージュ!

             

劇中の、BJ殺害シーンはウォルター・ヒル監督作品、芹香救出シーンはアメリカ映画「ストリート・オブ・ファイヤー」(1984年6月1日公開)、車に落ちる信号機は「ルパン三世 PARTIII」(1984年~1985年放送)オープニングのオマージュです。

・グアムロケ!

             

本作はクライムハンターシリーズ唯一の海外ロケ(グアム)作品です。グアムロケは国内ロケより先に行われました。また、グアムのポリスショップで、「立入禁止」テープ・弾薬箱等の小道具を購入したそうです。なお、リキが逃げ込んだ廃病院はメモリアル病院の廃墟であり、心霊スポットになっています。

収録ソフト

・単品

・BOX

 

絶対考察(ネタバレ注意)

 クライムハンター、犯罪狩り。刑事はまさしくクライムハンターである。刑事と犯罪者の闘い。それは殺しあいである。銃を向けあい銃弾を撃ちあう。それはいつまでも続くものではない。いずれは皆殺しとなるのだ。
 愛銃に装填しスライドを引く。リトルトーキョー。新たな闘いは、どしゃぶりの雨の中はじまる。助けを求めてきた一人の女。チェーンをはずし招き入れるジョウ。女を追ってきた屈強な男たち。ボスは白眼の男。探しているのは空き部屋ではない。すまんと言い残したBJ。銃に手が届かない。間もなくBJ自身も届かぬ存在となる。ガトリングガンの猛攻にトラックはふき飛び、ジョウも跳んだ。
 再びチェーンにつながれた芹香。タレコミ電話でリップスティックに会いにいくジョウ。あたたかいシャワーとは対照的なつめたいナイフがふりかかる。のぞいていた支那虎は耳をふさぐが、ライトカバーのように目をふさぎたくなる光景である。ナイフは光っていたが、リップスティックは永遠に光を失った。自らが血の口紅となる。
 血を洗い流せなくなったリップスティックを密告し、クリーンな金を手にした支那虎。試し撃ちをする支那虎をジョウが試す。
 リキを待つ二人は缶を開ける。現れたサンタクロースにポリスが銃をつきつける。直後、銃のプルタブが引き開けられる。酒は火となり、プレゼントは粉となる。
 注文の多い客を乗せたサニー。罠にとびこむ二人。なめられたくないサニーは、再び気絶し辛酸をなめる。パイプから水がふきだし火花をちらす闘いとなる。
 スクラップとなったリキをスクラップ置場につれこむ。手当てする医者を藪ではないかと疑うリキ。だが、ニコルとの取引こそ藪へびになりかねない。女と復讐と金。三人の思惑がうごめきだす。
 夕陽の中、思い出にたそがれるジョウ。芹香の恋人の頭を撃ちぬいた。くるっていたのは手元だけではない。心もだ。ジョウにも意地がある。
 芹香はみんな芝居で未練はないと言う。ドレスを脱げとニコル。本当に脱がせたいのは心に着ているドレスである。みんな裏切りっこはなしにしてほしい。噴きでるガスが雲行きをあやしくする。ブタどもが騒ぎだした。ディフェンスはラインマンの仕事だが、オフェンスを強いられるジョウ。ブタより鼻息のあらくなる闘いとなった。
 芹香を助けだすも警報が鳴り響く。警報はリキの裏切りをジョウに知らせるものだった。ショータイムである。ジョウは古傷に血がにじむが、リキは新傷に血がにじむどころではない。幸い足の傷だけで済むが、車の足も悪いようだ。火の海からの脱出に成功する二人。
 火がついたように走りだす芹香。リキはアクセルから離れないが芹香はサニーから離れていく。200万ドルは芹香が隠していた。ニコルの眼鏡は狂っていなかった。追い詰められる二人。サニーの銃がホールドオープンする。白眼が見開かれる。芹香をはさみ、撃ちあうジョウとニコル。二人の銃もホールドオープンする。だが、二人とも芹香の心は開けなかった。スライドとともに二人の心も閉じる。リキ、芹香、ニコルは立ちさり、サニーは連れさられた。
 取引電話がかかり、芹香からも電話がかかる。電話ボックスの中、孤独な芹香。捨てられなかった思い出のドレス。やり直したかったという言葉は嘘ではなかった。心を閉じるためではなく心を開くためにドレスを着ていたのだ。「ありがとう」。ガトリングガンが夢を撃ち砕く。昔とともに芹香は戻らない。グッバイマイダーリンが燃える。
 火のついたジョウが決戦にむけて装備する。クォーターバックが現れた。最後の試合に臨む。壮絶な銃撃戦。皆殺しの銃弾がとびかう。各人の闘いが、放たれた銃弾のようにきざまれる。ジョウの愛銃がジャムる。ジャムのような甘い思い出はもはやない。今の闘いに銃弾と思いをそそぎこむ。残るはニコル。最後の銃撃戦。二人に引き金を引かせているのは意地だ。リップスティックのように血に染まるニコル。だが、その眼はまだ光を失っていない。
 赤信号が点滅している。闘いはまだ終わっていない。後ろから目を離すなとサニーに言った言葉が自らに銃弾とふりかかる。撃ちあうジョウとニコル。叫ぶジョウ。残弾を信号機に撃ちこむ。もう警報はいらない。倒れるジョウ。「ジョーカー!」。声は聴こえない。ニコルの目が真の白眼となる。
 すべてが爆発し燃えた。クライムハンター・ジョーカー。闘いは終わったのだろうか。皆殺しとなってしまったのだろうか。ジョウの姿が眼にみえない。