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なぜ、刑事ドラマはおもしろいのか。

NAZEDEKA。刑事ドラマを中心に「映画・テレビドラマ」について語っています。

あぶない刑事 research 1 「第1話 暴走」

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基本データ

メインタイトル:あぶない刑事
話数:第1話
サブタイトル:暴走
放送日:1986年10月5日(日)
視聴率:14.4%
監督:長谷部安春(初)
脚本:丸山昇一(初)
ゲスト:鹿又裕司、河西健二、井上博一、寺島まゆみ、浦辺粂子清水紘治(セミレギュラー(初))
主役:タカ(初)、ユージ(初)
準主役:なし
銃撃戦:C
爆破:B
格闘:なし
カーアクション:C

概要

サブタイトルは「暴走」。
長谷部安春初監督、丸山昇一初脚本作。
タカ、ユージ初主役作。
柴野悟初登場作。

爆弾と拳銃を持ち逃亡した未成年者が殺人を犯す少年犯罪の物語です。刑事・犯人・事件関係者の人間模様を時代観・世代観を通じて描く、ヒューマン作品となっています。また、タカとユージを始め個性豊かな港署メンバーにも注目です。

解説

・アクション

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本作のアクションは「爆破」がメインです。
車・川の中の爆破があります。その他は、タカのバイクアクション等があります。

・ヒューマン

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本作のヒューマンは「新旧」と「少年犯罪」がメインです。
「新旧」は、事件関係者の時代観・世代観が表出され、対比により変化が描写されています。「少年犯罪」は、犯人の未熟さと犯人に関わった大人達の未熟さ双方により生み出された悲劇が描写されています。

豆知識(ネタバレ注意)

・ロゴが違う!?

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上記2つの画像を見比べて見て下さい。違いにお気づきでしょうか?
左側の画像は本作の予告編(正確には「あぶない刑事」自体の新番組予告編)のタイトルロゴで、右側の画像はオープニング及び第2話以降の予告編のタイトルロゴです。見比べて頂くと分かりますが、本作の予告編のみ「あぶない」の文字の下に波線が入っています。これは、本作の予告編で一度だけ使用されたロゴで、以降は右側の画像のロゴが使用されています。その為、大変貴重である点とロゴが複数パターン存在していた事が分かります。

・二十三時五十九分

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本作が放送されたのは「1986年10月5日」ですが、近藤課長役の中条静夫さんがお亡くなりになったのは本作放送の8年後となる「1994年10月5日」であり、中条さんの命日は「あぶない刑事」の開始日と同日になっています。更に、劇中、タカが近藤課長に犯人の犯行時刻を「二十三時五十九分」と記載した報告書を提出し、それを見た近藤課長が感慨にひたる表情を浮かべるシーンがありますが、中条さんの亡くなった時刻も「23時59分」であり、同時刻だったのです。もし臨終の時刻があと1分後であれば命日も変わり、放送日と同日にはならず、本作の内容をも想起させ、驚きを隠せません。なお、犯行の目撃者役の浦辺粂子さんの誕生日が「10月5日」であり、本作の放送日が84歳の誕生日となっています。また、ホステスの麻生レミ役の寺島まゆみさんの誕生日は「3月31日」であり、舘ひろしさんと同じ誕生日です。

収録ソフト

・単品

あぶない刑事 VOL.1 [DVD]

あぶない刑事 VOL.1 [DVD]

 

・BOX

あぶない刑事 DVD Collection VOL.1

あぶない刑事 DVD Collection VOL.1

 

 

考察(ネタバレ注意)

メインタイトルが「あぶない刑事」、第1話のサブタイトルが「暴走」という新しいアクション刑事ドラマが放送されると聞いてどんな内容を想像するだろうか。おそらく銃撃戦や爆破等がたくさん繰り広げられる内容を想像するのではないか。しかし、本作のタカとユージの発砲回数は「0回」である。アクション刑事ドラマの初回にも拘わらず、主役刑事2人の発砲回数が0回とは大変珍しい。本来であれば規模の大小はあれど、初回はアクションを重視した作品作りが定石である。しかし、本作はアクションよりヒューマンの描写が断然濃い内容となっている。本作のヒューマンは「新旧」と「少年犯罪」の2つである。このキーワードには、脚本家が丸山昇一である点が大きく影響している。丸山昇一脚本は、その時代時代の若者像を描く特徴がある。本作もその特徴が如実に表れている。刑事側犯人側双方に新時代を反映する若者が配されているのだ。刑事側は新人刑事のトオルである。トオルは彼女が待っているからと平然と帰ってしまう。全く悪びれず、本当に平然としており、まずい事をしている自覚が無い。対して犯人側は今村が該当する。今村は未成年ながら爆破も殺人も平然と実行した。そう、トオルと同じである。刑事と犯人という正反対の立場にありながら、全く悪びれず行動する若者として一致している。更に、この若者像の描写を強調する為の対比がされており、トオル・今村それぞれに対照的な人物が配されている。トオルには近藤課長やナカさん、今村には吉野がそれである。これらの人物と対比される事で、新時代の若者像の描写をより強くする効果が上げられている。延いては「新旧」の人間ドラマが生み出されている。もう1つのヒューマンは「少年犯罪」である。この人間ドラマにおける特徴は、今村の誕生日に絡んだタイムリミット要素にある。このタイムリミット要素には2つの役割がある。1つは、少年法の是非を視聴者に考えさせる役割。今村はタカの判断により少年法が適用された。しかし、視聴者の中にはタカの判断に疑問を持つ人もいるだろう。もう1つは、作品全体がヒューマン色に染まるのを防ぐ役割。初回である旨を考えた際、やはりアクション刑事ドラマらしさも組み込まなくてはならない。タイムリミット要素により、緊迫感ある展開が望め、作品がヒューマンで凝り固まらないような配慮が感じられる。タイムリミット要素には人間ドラマの深みを増す一方、作品の世界観を崩さず、アクション刑事ドラマらしさも加味する役割があるのだ。本作を俯瞰すると、おしゃれなファッションやBGMに加え、所々にコメディ描写がちりばめられているが、全体的にはあまり明るい印象は受けず暗く重苦しい空気感が感じられる。本文の冒頭、本作はアクション刑事ドラマの初回にも拘わらず、ヒューマン描写が濃い旨を述べたが、その訳は「アクション刑事ドラマ」としての体裁よりも、時代反映を優先させた精神的な革命に他ならない。本作が放送された2ヶ月後にはバブル景気がスタートし、明るい時代へと向かうが、その明るさの陰にある若者の「暴走」を本作は描写し、また「バブル」という名の「暴走」を予感しているのではないだろうか。