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なぜ、刑事ドラマはおもしろいのか。

NAZEDEKA。刑事ドラマを中心に「映画・テレビドラマ」について語っています。

あぶない刑事 research 9 「第9話 迎撃」

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基本データ

メインタイトル:あぶない刑事
話数:第9話
サブタイトル:迎撃
放送日:1986年11月30日(日)
視聴率:15.5%
監督:西村潔(初)
脚本:丸山昇一(2)
ゲスト:庄川正信、新海丈夫、江崎和代
主役:松村課長(初)
準主役:なし
銃撃戦:B
爆破:なし
格闘:B
カーアクション:C
事件キーワード:強盗、トルエン、拉致、監禁、殺人未遂、傷害、殺人

概要

サブタイトルは「迎撃」。
西村潔初監督作。
松村課長初主役作。

松村課長と目の前で祖父を撃たれた少年が宝石強盗殺人犯に追われる物語です。松村課長を主役として、タカとユージを脇役とした異色の作品となっています。また、松村課長とカオルの初アクションにも注目です。

解説

・アクション

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本作のアクションは「銃撃戦」がメインです。
松村課長(拳銃)・カオル(拳銃)と犯人(拳銃・ライフル)の銃撃戦、トオル(拳銃)と犯人(拳銃)の銃撃戦、タカ(拳銃)の銃撃があります。その他は、松村課長・カオルの格闘や松村課長・ユージの車のアクションがあります。

・ヒューマン

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本作のヒューマンは「松村課長と少年」がメインです。
犯人グループに追われる松村課長と少年。当初は互いに反目し合うも、徐々に心を開いていく2人の交流が描写されています。

豆知識(ネタバレ注意)

・「グロリア」

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本作は松村課長と少年の逃避行が描かれた物語となっていますが、このプロットはアメリカ映画「グロリア」(1980年10月1日公開)からの流用となっています。これは、松村課長役の木の実ナナさんが「グロリア」を観て感動した旨を本作の脚本家である丸山昇一さんに伝えた事で、松村課長主役及びプロット流用の運びとなったそうです。

・「よみうりランド

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劇中、逃避行の末、松村課長と庄川正信さん演じるゲン少年が逃げ込んだ先は東京都稲城市にある「よみうりランド」です。劇中では「お化け屋敷」がクローズアップされていますが、この「お化け屋敷」は2009年9月に営業を終了しています。しかし、建物はそのまま残され、現在は期間限定イベントのお化け屋敷として利用されています。

・「アザミ嬢のララバイ

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劇中、松村課長が弾切れの拳銃を手にして歌を口ずさむシーンがあります。この歌は中島みゆきさんのデビュー曲「アザミ嬢のララバイ」(1975年9月25日リリース)です。これは、本作の監督である西村潔さんが中島みゆきさんの大ファンであった為に盛り込まれた形となります。なお、本作以前の西村潔さん監督作「探偵物語」第6話「失踪者の影」(1979年10月23日放送)においても「アザミ嬢のララバイ」が挿入歌として使用されています。更に、この作品内では松村課長役の木の実ナナさんの楽曲「うぬぼれワルツ」(1978年7月7日リリース)も挿入歌として使用されており、その使用場面が遊園地跡地のシーンである為、本作が「失踪者の影」の影響を受けた可能性も考えられます。

・ラストカットは松村課長!?

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あぶない刑事」のラストカットは、毎話カオルのワンショットで終了しますが、本作は松村課長のワンショットで終了しています。これは、本作が松村課長単独主役作である為の措置であり、正に特別カットと言えるでしょう。

収録ソフト

あぶない刑事 VOL.1 [DVD]

あぶない刑事 VOL.1 [DVD]

 

 

考察(ネタバレ注意)

本作は異色作である。タカとユージが主役でなく、かつ、準主役にも該当しない作品であるからだ。主役は松村課長であり、タカとユージは完全な脇役に徹している。この経緯は豆知識に記載をしたが、脚本家が丸山昇一である事で、若者像の描写や嘘による犯人の翻弄等、第1話との共通点も見られる。しかしながら、本作の注目点は「グロリア」のプロットを刑事ドラマ作品として仕上げた構成にある。この構成の中心となるのが、松村課長の苦悩描写だ。少年課刑事としての在り方を嘆く姿は、刑事ドラマの基本描写であり、その後の逃避行に刑事ドラマとしての重みを根付かせている。また、少年課の松村課長を捜査課の事件に巻き込む形が取られているが、これは松村課長主役作としてのお膳立て(アクション含む)というより、タカとユージに対する配慮と見て取れる。事件が少年課の案件から派生した形では、タカとユージが介入する余地が極めて薄くなってしまうからだ。主役では無いにしろ、2人の描写も当然組み込まなければならない。現に序盤は、弾倉を確認する2人や、第8話に続きコスプレ姿で張り込みをするユージが描かれており、いつもの「あぶない刑事」を思わせる展開になっている。こうした流れを経て「グロリア」のプロットに結び付けられており、中盤以降の逃走劇では、松村課長とゲン少年の世界が構築されている。その為、犯人グループの服装や行動もステレオタイプで、逃げ込んだ先が無人の遊園地である等、無国籍感が醸し出されている。ラストカットが松村課長で幕引きされている点も、独立した別作品のような印象を強く与える。本文の冒頭、本作は異色作であると述べた。しかし、松村課長の苦悩描写やカオルとの銃撃戦(淡々としたドライな画)は、過去のタカとユージにおいても描かれていない本格的な刑事ドラマ表現である。これらの表現を、タカとユージより前に松村課長とカオルの2人で描いている点は特筆すべきものであり、この点を挙げれば本作を逆異色作とも言えるだろう。