なぜ、刑事ドラマはおもしろいのか。

NAZEDEKA。刑事ドラマを専門に「映画・テレビドラマ」の研究をしています。

大都会 -闘いの日々- 第1話 妹

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基本データ

メインタイトル:大都会 -闘いの日々-
話数:第1話
サブタイトル:妹
放送日:1976年1月6日(火)
監督:小澤啓一(初)
脚本:倉本聰(初)
ゲスト:水沢アキ石橋蓮司
主役:黒岩(初)
準主役:恵子(初)

概要

サブタイトルは「妹」。
小澤啓一初監督、倉本聰初脚本作。
黒岩初主役、恵子初準主役作。

婚約中の女性の兄が殺人を犯す物語です。二組の兄妹の生き様を描く作品となっています。また、本作がデビューとなる神田正輝さんにも注目です。

解説

・ヒューマン

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本作のヒューマンは「二人の妹」がメインです。
刑事の妹とヤクザの妹。二人の妹の悲恋が描写されています。

豆知識(ネタバレ注意)

・デビュー作!

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本作は神田正輝さんの初出演作です。神田さんはスキーのテスターをされていましたが、石原裕次郎さんと出会いスカウトされ、出演となりました。この際、裕次郎さんからは「冷やかしでいいからやってみろ!」と言われたそうです。

収録ソフト

・BOX

 

絶対考察(ネタバレ注意)

 刑事にも妹はいる、ヤクザにも妹はいる。刑事の妹、恵子は過去の事件で恋人との別れを余儀なくされた。ヤクザの妹、元子は兄が起こした事件で婚約者との別れを余儀なくされた。2人の妹は兄の生業によって人生が狂わされる。
 元子に聞きこみをする際、丸山と元子の会話を黒岩は離れて見聞きする。元子に恵子が重なる。途中、恵子の姿を目にする。その夜、帰宅すると冷蔵庫に御飯が入っているとの書き置きがある。恵子の目には涙。恵子の手料理は冷蔵庫で冷やされても黒岩には暖かい。しかし、事件以来、恵子には冷たい思いをさせている。恵子は暖かい御飯を食べているのであろうか。自分は恵子を冷蔵庫の中に入れてしまったのではないか。
 苦悶する日々を送ってきた黒岩に、うれしい再会が訪れた。滝川との再会、電話の声が小さくなる。尊敬の表れ。滝川には心を開いて話ができる。捜査の中での安らぎ。が、捜査が進展するにつれ、元子の口と心は閉ざされる。
 元子は丸山に、自分は善良な市民であると問いただす。犯罪者と犯罪者をかばう者は善良な市民じゃないと丸山は答える。善良な市民を守るのが警察だとはよくいうが、警察自身は善良なのだろうか。丸山も黒岩も今一人、恵子と同じ思いをする女性を生みだそうとしている。この矛盾と闘っているのは黒岩と丸山だけではない。新聞記者である滝川も、また新人記者の九条も直面する事となる。
 元子が小沼と待ちあわせた喫茶店。黒岩と丸山、そして九条も訪れる。静かな店内とは対照的に無線の声が激しく飛びかう。表面上は穏やかだが、胸の内では叫びをあげる恵子と元子のようである。小沼が現れ、「お兄ちゃん!」と元子はかけよる。結婚のために肉親を売ることはできなかった。黒岩は小沼を逮捕するが九条の問いには答えない。九条は若さゆえに黒岩の心情を汲みとれないまま記事を書く。その記事を見つめる滝川は何を思うか。
 事件後、黒岩の口からは繰り返しタバコの煙が吐きだされる。すべては繰り返しなのだ。事件は繰り返され、事件による悲劇も繰り返される。それは事件の第一報で被害者の氏名、職業が繰り返され、記者たちが会見でメモをとるふりを繰り返したようでもある。しかし、タバコの煙のように恵子と元子がうけた傷は消えはしない。刑事、ヤクザ、記者。生業は人を傷つける。
 「お兄ちゃん!」と恵子が黒岩にかけよる。笑顔で街を歩く兄妹。兄が妹にしてやれることは何であるか。闘いの日々は続く。