なぜ、刑事ドラマはおもしろいのか。

NAZEDEKA。刑事ドラマを専門に「映画・テレビドラマ」の研究をしています。

ザ・テンプターズ 涙のあとに微笑みを

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基本データ

タイトル:ザ・テンプターズ 涙のあとに微笑みを
公開日:1969年3月29日
上映時間:83分
監督:内川清一郎
脚本:池田一朗
出演者:萩原健一新珠三千代、聖ミカ、松崎由治高久昇、須賀不二男、山岡久乃大口広司田中俊夫堺正章

概要

自信を失った高校生がグループサウンズを結成し、音楽を通して自信を取り戻してゆく物語です。「ザ・テンプターズ」の楽曲に彩られた世界を幻想的に描く作品となっています。また、ショーケンボーカルの「おかあさん」にも注目です。

解説

・ヒューマン

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本作のヒューマンは「ショーケンの成長」がメインです。
「ザ・テンプターズ」を心の支えとし、多難を乗り越え成長してゆくショーケンの姿が描写されています。

豆知識(ネタバレ注意)

・「ザ・テンプターズ

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劇中、登場するテンプターズの楽曲は8曲あります。「純愛」「神様お願い!」「エメラルドの伝説」「涙のあとに微笑みを」「僕たちの天使」「いつも君の名を」「おかあさん」「秘密の合言葉」です。この際、「純愛」「エメラルドの伝説」「涙のあとに微笑みを」「僕たちの天使」「いつも君の名を」「秘密の合言葉」はレコード音源が使用されています。「神様お願い!」「おかあさん」は新録版が使用されています。

・歌詞が違う!?

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劇中、鳩のゴローの埋葬シーンで「神様お願い!」が流れます。この際、歌詞の「あの娘は」が「鳩は」に変えられています。

・「恋の季節

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劇中、ものまねコンテストでショーケンが歌った曲は、ピンキーとキラーズの楽曲「恋の季節」です。本作公開8ヶ月前の1968年7月にリリースされました。また、本曲を題材とした映画「恋の季節」が本作公開1ヶ月前の1969年2月に公開されています。

・「丸山明宏」

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劇中、ものまねコンテストに出場予定だった生徒がものまねした「丸山明宏」とは、美輪明宏さんの本名・旧芸名です。1971年に現在の美輪明宏に改名されました。

・神様は「ザ・スパイダース

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神様を演じた堺正章さんは、グループサウンズザ・スパイダース」のメンバーです。「ザ・テンプターズ」は、スパイダースの弟分グループとしてデビューしたため、カメオ出演されています。

・「聖ミカ」

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神様に魔法を授けられた少女ミカを演じたのは聖ミカさんです。聖さんは約500人の応募者から選ばれ、出演となりました。また、本作が唯一の映画出演作です。

・夢が叶った!

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劇中、ショーケンはギャング強盗と外科医の夢を見ます。萩原健一さんは、映画「いつかギラギラする日」(1992年9月12日公開)でギャング強盗、ドラマ「外科医柊又三郎」(1995年~1996年放送)で外科医を演じています。

収録ソフト

・単品

 

絶対考察(ネタバレ注意)

 ショーケンはよく涙を流す。涙を流したくなるときがたくさんあるのだ。ゴローの死、自己嫌悪、母の再婚、出生の秘密。だが、涙のあとに微笑みを与えてくれるものがある。母、仲間、そして音楽である。
 ザ・テンプターズ。結成のきっかけはゴローの死であった。自信をなくしたショーケンに、できることではなくしたいことは何かと問いただしたヨッチン。その答えがグループサウンズである。歌っているときのショーケンは生き生きとして、あらゆる苦難からの解放を具現化している。それは、涙の数と同じくらい見た、なんでもできる夢の世界のようである。
 夢のような魔法を神様から授けられたのはミカである。ゴローの魂が宿り、ショーケンテンプターズをサポートする。しかし、魔法をもってしても解決できない問題がある。いや、解決してはいけないのだ。ショーケンの魂の問題。これは彼自身で決着をつけなくてはならない。
 皿井のラブレターにショックをうけたショーケン。ハトとともに仲間と飛び立つ。だが、ヒッチハイクする車はどんどん遅くなる。自然にブレーキがかけられているようだ。戻ってやらなければいけないことをゴンドラを見つめ心づく。直後、出自をしり心がゆさぶれる。皿井の言うとおり地震ではないようだ。母への想いが歌となりあふれでる。伝書鳩になってくれたおばさんにならい、自分もハトのように家路につく。実子でないことが親子の絆を盤石にしてくれた。帰りを待っていたハトにとっては、ショーケンが母である。母としてゴローの仇をとらなければならない。
 ハト派ショーケンがアキモトに仕返しをする。風がふきすさみ、ゴンドラに乗りこむ。ロープを巻きあげるさなかゴンドラがゆれる。地震ではない。が、ショーケンには自信がある。母、仲間、ゴローとの絆という命綱があるからだ。ゴローに許しをこうアキモト。勝ったショーケン。魔法の力を借りずに勝ったことが一人前の証しである。直後、アキモトから仕返しされるが、ミカの魔法で撃退する。卑劣なアキモトに魔法を使うのは神様も許してくれるだろう。
 一人前になったショーケンは、泥棒ネコみたいなネズミのように小さくなく、しょうのないケンイチでもない。たくましくなったショーケンは母の再婚をうけいれる。結婚式場で「涙のあとに微笑みを」を歌う。母の再婚までの苦難の涙が久子の幸せという微笑みとなる。仲間もお祝いしてくれた。ゴローと同じ色の黄色のドレスを着ているミカ。ゴローも来てくれているみたいだ。ノボルとは兄弟になる。親二人子二人の新たなる門出。
 ショーケンの襟を正す久子。最後の涙を流すショーケン。これからは自分の襟は自分で正していかなくてはならない。魔法の力を借りずゴンドラの歯車を動かしたように、人生の歯車を自らの力で動かさなくてはいけないのだ。また涙を流したくなるときもくるだろう。そのときがきても、家族、仲間、音楽がまた微笑みを与えてくれるはずだ。
 役目を終えたゴローがミカから飛び立ち神様のもとへ帰る。「おやすみなさい」と神様。ショーケンはいつまでもいつまでも夢を見続けるのだ。