なぜ、刑事ドラマはおもしろいのか。

NAZEDEKA。刑事ドラマを専門に「映画・テレビドラマ」の研究をしています。

大都会 -闘いの日々- 第4話 協力者

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基本データ

メインタイトル:大都会 -闘いの日々-
話数:第4話
サブタイトル:協力者
放送日:1976年1月27日(火)
監督:村川透(初)
脚本:倉本聰(3)
ゲスト:松田優作小鹿番、岡本麗
主役:黒岩(3)
準主役:-

概要

サブタイトルは「協力者」。
村川透初監督作。

黒岩の情報屋である協力者が殺害される物語です。おとしまえをつけようとする協力者の弟と黒岩の皮肉の勝負を描く作品となっています。また、のちに「大都会 PARTII」に出演する松田優作さんにも注目です。

解説

・ヒューマン

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本作のヒューマンは「片眼」がメインです。
事件は片眼で見ていても真実にはたどりつけない。犯人を片眼で追いつづけた次郎の姿が描写されています。

豆知識(ネタバレ注意)

・監督と次郎は協力者!?

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本作のメインゲストである松田優作さんは、監督の村川透さんのオファーにより出演となりました。村川さんは松田さんと初めてあった際、お互い「協力者」であると直感したそうです。

・「太陽にほえろ!」

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劇中、聞き込みの報告をする丸さんが「ちょうどテレビの「太陽にほえろ!」が始まった時間」と言います。本作放送4日前の1976年1月23日に第184話「アリバイ」が放送されました。また、「太陽にほえろ!」(1972年~1987年放送)は、石原裕次郎さんが「大都会」シリーズと掛け持ち出演しており、のちに神田正輝さん、渡哲也さん、寺尾聰さんも出演しました。なお、本作のメインゲストである松田優作さんも出演しています。

・復帰作!

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本作の監督である村川透さんは、日活を退社し郷里に帰られていましたが、本作で監督復帰を果たしました。

収録ソフト

・BOX

 

絶対考察(ネタバレ注意)

 警察の協力者は危険を伴う。マル暴の刑事へならなおさらだ。協力者は殺された。その弟は警察と新聞が兄を殺したと信じた。
 滝川が没にした写真によって協力者は没した。縁の下の人々を縁の上に出してしまった。東洋新聞は紙上に火事をおこしたのだ。
 丸さんは奥さんに買い物をし、加賀見は息子の就職を支援する。誰でも家族は大切だ。ヤクザだって同じである。
 松宮の店には「本日休業」の札が下がる。松宮自身は永遠に休むこととなった。兄の死に次郎は生の火をたぎらせる。兄弟の様相は、沈む警察・東洋新聞と、はためく毎朝新聞・中央タイムズに反映される。それは下のタバコと上のチョコレートのようである。
 次郎は黒岩への伝言をのべる。が、黒岩は自分で聞いていた。次郎は黒岩に勝負をいどむ。
 黒岩には直子からも伝言があった。雨がふり雪となる。次郎は情婦とホテルへ入る。裸でもあたたかい。張り込む黒岩に水がはねる。服ごしでもつめたさが身に沁みる。
 直子は情報をくれた。協力者である。だが、誰から聞いたんですという問いには答えない。
 今度は次郎が寒さにたえる番だ。リンカーンから出ろと言われる。咳きこむ次郎。兄の殺される姿が浮かぶ。水が血に染まる。自らがただれた赤提灯のようである。
 談笑する刑事たちのもとへ次郎がくる。寒いから中に入らんかと言われるが立ちさる。中に入っても自分の居場所ではないことをリンカーンで知っていた。次郎に笑顔はない。丸さんは薬はいいのかと奥さんに聞く。次郎には聞いてくれる人はいない。
 たまった思いを吐きだすべく、たまった金を母にたくす。黒岩が入る店からは大音量がもれる。急がなければ次郎の思いがもれてしまう。ヒラオのもとへ向かう途中、肩がふれる。罵った相手を痛めつける。
 ヒラオの居場所にたどりついた次郎。陽気な音楽がもれている。マッチの番号でヒラオをよびだし、自らに火をつける。叫びに金がまう。もう叫びも金もいらない。ドラムが次郎をたたえてくれる。笑顔がとりもどされた。黒岩の眼には橘マーク。
 真犯人が捕まった。動機はけちなけんか。肩がふれたという。次郎のタバコが勝利とともにおちる。サングラスの左目に黒岩がうつる。サングラスをはずす。左眼はなかった。黒岩は見えていなかった。
 次郎は片眼ですべてをみていた。関西弁・トレンチコート・横浜・橘マーク・リンカーン。断片的な情報で本質を見抜けなかった。もやがかかったように。肩がふれた相手のことなど気にもとめなかった。それが真実だったのだ。それは少牌に気づかなかった滝川のようである。片眼がかけていたのに、勝利に向けて、血を流す水道のように突き進んでいた。結果むだな血を流してしまった。心にもサングラスをかけるべきでなかった。
 黒岩は直子におやめなさいと言う。直子がみえないのは電話だからではない。片眼で直子をみているからだ。大内と平原は鍋焼きうどんをたのむ。黒岩はたのまない。鍋焼きうどんを食べてもあたたまらないことはわかっている。
 橘の花言葉は「追憶」。次郎は兄を追憶できるであろうか。黒岩が直子を追憶するにはまだはやい。